〜統計について〜
研究デザインも決まり、いよいよデータを集めていきます。でも、その前にしっかりと研究計画をしないと、せっかく集めたデータが使えず、無駄になってしまいます。まずは、自分が集めるべきデータが何で、そのデータの種類は何なのかということを知っておく必要があります。そして、どのような統計学的分析を行うことにするのか、今のうちに勉強をしておきましょう。
説明
統計は、難しいものです。さっぱりわからない・・・と思う人も多いでしょう。
研究を行うにあたって、統計学的分析を行わなければならなくなることがよくあります。
統計の手法は数多く、どれを用いたらよいのか悩んでしまいます。
でも自分が扱うデータの種類がわかり、研究のテーマと目的、研究法が定まっていれば、統計学の基本的な内容を扱っている清書が導いてくれます。
もしくは、参考となる先行文献を参考にしたり、統計学に精通している先輩に聞いたりするというのがいいでしょう。
いずれにしても、自分の行う研究のデータの種類はどういうものであり、統計によって何を明らかにするのかということを知っておくべきでしょう。
難しいことは清書を参考にしていただくことにして、統計を行うために必要な基本を書いておきます。
Ⅰ.データの種類
みなさんが集めたデータの種類によって、用いる統計が異なります。
1.カテゴリーデータ
① 名義尺度 血液型や性別など、順序関係がないもの
② 順序尺度 病期分類や重症度、痛みの強さなど、カテゴリー間に何らかの順序関係があるもの
2.数的データ
① 離散データ 有病月数や外来受診数、転倒数など、数えられる整数値
② 連続データ 体重や身長などの連続値。厳密には小数点が無限に続く値
Ⅱ.代表値と広がり
代表値について理解し、データが代表値を基準にしてどのように分散しているかがわかれば、集めたデータのイメージを解釈することができます。
1.代表値
①平均値 基本的には連続データに対して用いられる
②中央値 外れ値があるときに用いることが多い。データを小さい順に並べたときに、中央にある値が中央値である。順序づけられたデータを上下半分ずつ同数に分割する。
2.広がり
①範囲 範囲はデータ全体のなかの最大値と最小値の差。大きい順にデータを配列し、全体の25%の観察値がその下にある値を25パーセンタイル値という。50パーセンタイル値は中央値。25パーセンタイル値、75パーセンタイル値の差である「四分位範囲」を箱ひげ図を用いて示すこともよくある。
②分散 データの広がりを評価する方法。データの広がりを示す際、「平均からの差」の平均値は0になってしまいます。このため「平均値との差」の二乗を用い、その合計を「対象者の人数-1」で割ったものを分散としています。
③標準偏差 分散は単位が元の観測値の二乗となり、例えばkgなら分散の単位がkg2になってしまう。分散の平方根が標準偏差。簡単に考えると『「平均からの差の平均値」のようなもの』。
Ⅲ.統計を用いる際に考慮すべきこと
1.データは正規分布しているか
正規分布に従わない場合やデータの分布が推定できないほど標本が少ない場合には“ノンパラメトリック検定”を用いる
2.2つ以上の分散は等しいか
みなさんご存知のt検定や分散分析の基本には、各群における観察値の分散が等しいという仮説がある。もし、その仮説が満たされない場合には“ノンパラメトリック分析”を行う。
*補足 対応のある/なし
「対応のあるt検定」という言葉を聞いたことのある人も多いと思います。
・個々の患者について、積極的な新しい治療を受けた場合と、一般的な治療を受けた場合の2回測定されたような場合
・各標本の個体群は異なるが、互いに何らかの関係がある場合。たとえば症例対象研究では、双方の患者群はマッチングされることもあります
以上のようなデータを、「対応のある」データといいます。
Ⅳ.統計学的手法
研究デザイン、データの種類、データの分布の概略がわかりましたでしょうか。研究デザイン、データの種類、データの分布によって用いるべき統計は異なります。データの種類や分布がわかったら、下記のチャートを参考にどの統計を用いるべきなのかを考えてみてください。
参考文献
1)吉田勝美監訳:一目でわかる医科統計学.メディカル・サイエンス・インターナショナル
2)西内 啓:世界一やさしくわかる医療統計.秀和システム
3)対馬栄輝:統計解析の進め方①:統計学の基礎.理学療法28巻5号
4)対馬栄輝:統計解析の進め方②:差の検定.理学療法28巻6号
5)対馬栄輝:統計解析の進め方③:分散分析.理学療法28巻7号
6)日本作業療法士協会:作業療法マニュアル34.作業療法研究法マニュアル
ナビゲーター/Story原作: 森下史子
イラスト: OTナガミネ http://otoba.ame-zaiku.com